2004フォーミュラ・ニッポン第6戦
8月28〜29日、山口県MINEサーキットにて、フォーミュラ・ニッポン第6戦が開催されました。今季の前半戦は流れが悪く苦しい戦いとなっていましたが、後半戦には入りようやく開花宣言!シリーズチャンピオンへ向け、チーム一丸となって猛ダッシュをかけることになります。
脇阪寿一の現在のポイントランキングは、10ポイントで7番手。しかし上位は混戦状態で、トップのリチャード・ライアンとの差は13ポイントとなっています。チャンピオンへ向け大事な1戦となる第6戦MINEは、各チームの戦略に注目が集まりました。脇阪は予選5番手、3列目アウト側グリッドからのスタート。
決勝日(8/29)は、大型台風16号の影響を後目にサーキットは時折痛いほどの太陽が降り注ぐ夏日。路面温度は42℃。
1周約3.33kmを70周で争われるMINEサーキットは、直線距離が900mと長く中低速のコーナーが多いサーキット。コーナリングと暑さによるタイヤの摩耗も激しく、ドライバーのテクニックも問われるレース後半は、オーバーテイクシーンも多くなり見所の一つとなります。
14:30天候は曇り。うだるような蒸し暑さと台風の影響による1コーナー側からの強風の中、過酷なレースのフォーメーションラップが始まりました。息をのむ静けさの中レッドシグナルが点灯し、いよいよスタート! 16台中もっとも美しいスタートを切ったのは脇阪寿一。
5番手からするすると前に出て、1コーナーを2番手で制します。他の車両がゆっくり見えるほどのロケットスタートに、歓喜の声が漏れる一瞬でした。トップから、ブノワ・トレルイエ、脇阪寿一、リチャード・ライアン、井出有治、本山哲、金石年弘の順。
オープニングラップから、PIAA NAKAJIMAの2台が接触しリタイア。その後、道上がフロントウイング破損で予期せぬピットインを強いられます。そして2周目には土屋武士、道上龍にフライングによるドライブスルーペナルティが出され、序盤から荒れたレースとなりました。
8周目に入り、2番手を走行中の脇阪は無給油作戦での戦いに、ややペースを押さえ気味での走行が続きます。しびれを切らした5番手の本山が先に動き出し、ピットイン。無給油・タイヤ4本を交換しコースに復帰。直後に井出もピットインし、各チームのピットは慌ただしくなりました。しかしこの直後、井出のコースイン時に本山のラインと交差し、本山は押し出される形でコースアウト。数周後、井出にドライブスルーペナルティが出されます。
2番手を快走する脇阪は、ペースを抑えているためトップのブノワ・トレルイエとの差がやや開き始め、8周目の3.889秒から28周目には8.135秒に。後ろの3番手を走行するリチャード・ライアンにコンマ7秒と迫られます。
30周目にトップのトレルイエがピットイン。給油とタイヤを交換し14.0秒でピットをあとにします。
脇阪がトップに立ち、無給油のままどのようにレースをコントロールするかに注目が集まります。しかし、突然脇阪陣営のピットが慌ただしくなり、32周を終え緊急ピットイン。タイヤ交換のみでピットを離れますが、13.6秒と作業にやや時間がかかってしまいます。トレルイエの前での復帰は叶わず、7秒差でトレルイエの後ろでコース復帰。トップを走るライアンとの差は40.953秒。
トップを快走する本山哲が29周目にピットイン。充分のマージンを活かし4本のタイヤ交換・給油後、3番手でコースに復帰。この時点でトップから、小暮、服部、本山、脇阪寿一の順。
しかし脇阪は、ここから怒濤の追い上げを見せ35周目にはファステストラップをマーク。44周目に立川、45周目には服部をパスし4番手に浮上。さらに3番手を走行する金石年弘との差をジリジリと詰め、68周目にとらえ3番手に順位を上げ、表彰台を確実なものとします。この間に、トップのリチャード・ライアンとブノワ・トレルイエの争いは激しくなり、とうとうファイナルラップへ突入。
しかし第1ヘアピンで、イン側からさしたトレルイエのマシンがアウト側にふられ、ライアンと接触。ライアンは1回転し、あわや大惨事となる激しいクラッシュとなります。脇阪は、最後まで安定した走りを見せ、2位表彰台を獲得し、プラス16ポイント。
しかし表彰式及び記者会見終了後、担架で運ばれたリチャード・ライアン所属チームがトレルイエの接触を危険行為と抗議し、これが成立とみなされ、トレルイエの1周減算とペナルティポイント2点が科せられました。レースアクシデントとするトレルイエ側は控訴し、今後はモータースポーツ中央審査委員会で審議されることとなります。
これにより、順位繰り上げのため暫定で脇阪寿一が今季初優勝となりました。このまま優勝が確定すると、合計ドライバーズポイント20点となり、総合2番手。シリーズ優勝へ向け、大きな意味を持つこととなります。残り3戦、運と流れをつかんだ脇阪は粘りのある安定した走りとチーム力で、トップを目指します。
<寿一コメント>
「とにかく第5戦から調子が良く、2戦連続の表彰台は嬉しいです。
今回の作戦は色々な考え方があって、結局、無給油・タイヤ交換なしを選択しました。スタートは狙っていましたしね。トップを走るトレルイエがピットに入った時点で優勝を確信しました。序盤2番手走行中にトレルイエとタイム差が出るのは計算づく。無給油のためセーブしての走りでは、思ったより差がひらかなかったくらい。
ただ、32周目にタイヤに異物を拾い、右リアに違和感が出始めました。そのため、無線でピットインを知らせてから半周もしないうちにピットインしたので、作業に時間がかかってしまいました。ここでピットインすれば優勝は出来ない・・・とも考えましたが、タイヤのトラブルはまだ半分以上あるレースで考えると、リタイヤの可能性が高くなる。5、6位でもいいので確実に完走しポイントを獲得することを選びました。
ただ心配だったのは、ニュータイヤでの走行は必然的にペースが上がってしまうので、燃料が持つかどうかでした。かなりセーブしての走行でしたが、年弘(金石年弘選手)までは抜こうって決めていました。
今回は暫定ですが1位。でもぼくにとって1位か2位かはどっちでもいいと思えるくらい満足のいく完璧なレースでした。レースでこんな充実感は久しぶりかな(笑)
ただ1レースを考えると・・・で、ダブルタイトルを目指すことを考えるともちろん1位確定が嬉しいですけどね。4ポイントも違いますから。トラブルがあっても、ペースをセーブしても表彰台ですからね。いま、かなり速いと思うよ!(笑)今後が楽しみです。もちろん、皆さんも楽しみに期待していて下さい。」