2008/8/22-24
SUPER GTシリーズ戦の中で、もっとも長丁場の戦い…。それが今回第6戦の鈴鹿1000km。S-GTのシリーズ戦に組み込まれる以前より鈴鹿で繰り広げてきた“真夏の祭典”としても知られる。そのお祭りムードをよりいっそう高め、楽しもうと、今回も脇阪はグランプリスクェアにて「脇阪家」をオープン。「海の家」をイメージし、南国ムードあふれるスペースを作り上げた。前夜祭が行われた土曜は、あいにくの雨となったが、熱心なファンと充実した時間を共有することとなった。その一方で、レースはまず予選が雨に翻弄された。前日の練習走行では手ごたえあるセットアップを進め、予選アタックに向けての準備も進んでいたが、惜しくもそのチャンスが訪れることはなかった。午前の予選1回目は無事終了したものの、午後から雨脚が強まり、走行セッションはすべてキャンセルに。6番手のタイムをマークしたNo.36 PETRONAS TOM’S SC430は、上位の1台がエンジン交換による10グリッド降格となったため、決勝は5位からスタートを切った。決勝日は天候も回復。例年のような酷暑ではなく、暑さが少し和らぐ中での戦いに。レース序盤から大混戦に加わったNo.36 PETRONAS TOM’S SC430。途中、ロッテラー選手のペナルティが脇阪の走行中に提示され、10秒のピットストップを余儀なくされたが、そのロスタイムをカバーすべく脇阪が力走。終盤の夜間走行もコンディションに合わせ、巧みにマシンをコントロール。ライバルとのバトルを観客に披露し、大いに盛り上げた。結果、No.36 PETRONAS TOM’S SC430は3位でチェッカー。第3戦・富士以来の表彰台に上がった。
■8月22日・金曜日 公式練習 うす曇の天気で迎えた練習走行。気温は30℃を割り、湿度も低く、過ごしやすい1日となった。専有走行1回目は午前9時40分から11時10分まで実施。走行序盤に1度赤旗中断となったが、以後、安定したコンディションでセッションは終了。No.36 PETRONAS TOM’S SC430はまずは4番手につけた。 午後2時10分から3時55分までは専有走行2回目。午前中とほぼ気温は変わらず、路面温度が若干高くなったが、コンディションとしては申し分ない。今回、チームでは1000kmのロングレースに向けて第3ドライバーを登録。アンドレ・ロッテラー選手と脇阪のいつものコンビに、チームでF3に参戦中のカルロ・バンダム選手が加わったため、このセッションでは3人がドライブ。終盤に入ると、ロッテラー選手が自己ベストタイムを更新し、2番手となった。 1000kmでは夜間走行を含むため、午後5時50分からナイトセッションを実施。ヘッドライトを始め、装備関係のチェックを行いながら、マシンもセットアップ。No.36 PETRONAS TOM’S SC430は9番手のタイムをマーク。3セッションとも予定どおりのメニューを消化し、総合5番手で全セッションを終了した。 「暑さが心配だったのですが、今日は過ごしやすいコンディションの中で走ることになりました。この暑さが週末続くのであれば、クルマにもドライバーにもキツくないので、さらにいい走りができるでしょう」と脇阪。搭載されている30kgのウェイトについては、「現状では、上位を十分に狙えるスピードを確保できています」と良好さをアピール。「あとはセッションを通して、1000kmという長丁場で乗りやすいクルマ、アクシデントが起こってもスムーズに対処できる状況作りに取り組んでいこうと思います」と締めくくった。
■8月23日・土曜日 予選 前日夜半から降り出した雨。予選が行われた土曜日は、終始雨模様の1日となった。しかも、時折雨脚を強める集中豪雨の様相となり、レーススケジュールが大幅に乱れてしまった。まず、午前9時50分からの予選1回目。いつもどおり、GT300のセッションが終了、その後、GT500占有走行が始まる。気温は22℃、路面温度も23℃と大差ない。まず深溝のレインタイヤを装着したNo.36 PETRONAS TOM’S SC430がコースへ。ロッテラー選手はまずコンディションをチェック、アタックに入った。開始15分過ぎには雨が一旦止み、路面の水も減る方向に。この状況で浅溝タイヤでの走行が可能と判断したチームはロッテラー選手をピットインさせ、タイヤを交換。再度アタックを開始した。これより前、No.36 PETRONAS TOM’S SC430は2分8秒755のタイムで3番手につけていたが、好転するコンディションを味方にライバルは続々タイムアップ。逆にロッテラー選手はそのチャンスを活かすことができず、ピットにマシンを戻した。 すでにGT300との混走が始まっており、続いて脇阪が同じタイヤでコースイン。路面コンディションがさらに改善し、アタックが可能な状態だったが、脇阪のあとには、バンダム選手の出走が控えていたため、基準タイムをクリアする計測1周のみでピットイン。バンダム選手へステアリングを委ねた。これにより、No.36 PETRONAS TOM’S SC430は予選1回目を6番手で終了した。 午後に入ると、雨が強くなり、サポートイベントでは前方が見えない中での走行が強いられるという厳しいコンディションへと変貌。セーフティカーが先導し、赤旗中断をもってレース終了という展開となった。これを踏まえ、S−GTでは午後2時40分から開始予定の予選2回目の実施について検討を始めた。結果、まずスーパーラップの中止が決定。予選2回目は雨量を見ながら、時間を延期して行うとしたが、午後4時20分、天候回復が見込めないという理由から、残りの全セッションがキャンセルとなった。 長らくスタンドやパドックなどで再開を心待ちにしていたファンのため、急きょ、各チームの監督による握手会が設けられ、またおなじみのキッズウォークは予定どおり開催。走行をお披露目することはなかったが、雨の中、ファンとの交流は行われることとなった。同じく、グランドスタンド裏のグランプリスクェアでは、今や鈴鹿サーキット恒例となった「脇阪家」がオープン。海の家をイメージしたオープンスペースでは、オリジナルのフード・ドリンクメニューなどをふんだんに用意し、また前夜祭ではドライバーによるトークショーを開催するなど、雨の中でも大いに盛り上がった。 「先にアンドレが浅溝タイヤに変えてアタックしたんですが、その後、僕が同じタイヤでコースインしたときは、さらに路面も乾き、アタックするにはいいコンディションだったので、タイムアップを狙うチャンスも確実にありました。ただ、このセッション中に、第3ドライバー登録しているバンダムに乗ってもらって(基準タイムを)クリアしておけば、たとえコンディションが大きく変わっても、後のセッションでセットアップするため、アンドレが十分ドライブする時間を取ってもらえるとの判断から、僕は計測1周に留まりました。結果的に後のセッションが中止となりましたが、それは皆同じ条件なので気にしていません。ドンと構えて、明日の決勝を迎えたいと思います」 なお、予選1回目を6番手で通過したNo.36 PETRONAS TOM’S SC430だが、トップタイムをマークしたNo.100 NSXが金曜の時点でエンジン交換作業を行ったことから、規則に沿って10グリッド降格が決定。よって、No.36 PETRONAS TOM’S SC430は5番手グリッドからスタートを切ることになった。
■8月24日・日曜日 決勝 前日夜遅くにようやく雨が止み、早朝の鈴鹿はうす曇ながら、時折、晴れ間が見られた。午前8時30分、フリー走行がスタート。前日、午後からのセッションが全てキャンセルされたため、走行時間が10分延長され、40分となった。コースの一部がまだ濡れていることから、WET宣言下での走行に。前日、第3ドライバーの出走ができなかったチームでは、この時間枠での出走が義務付けられていたが、すでに前日タイムをクリアしていたチームでは、時間を十二分に活用したメニューを消化することができた。 まず、濡れた路面を考慮し、浅溝レインタイヤを装着してロッテラー選手がコースイン。早いタイミングで脇阪へと交代。さらに路面がほぼドライコンディションになると、スリックタイヤへと交換。再度、ロッテラー選手と脇阪がクルマのチェックを兼ねて周回を重ねた。結果、No.36 PETRONAS TOM’S SC430は脇阪がマークした1分58秒726のタイムで6番手につけることになった。 決勝レースを前に行われたピットウォーク。前日はあいにくの雨だったことから、決勝日はさらに大勢のファンが足を運んだ。No.36 PETRONAS TOM’S SC430のピット前ではドライバーが揃ってサインに応じ、決勝での活躍を誓っていた。 サーキットの上空は依然としてうす曇の状態。レース中もひと雨あるという情報もあり、油断できない。かと思えば、にわかに日差しが差し込むなど、猫の目のように変わりやすい天気となった。午後1時からのスタートを前に気温は28℃、路面温度は32℃へ上昇。グランドスタンドの大きな応援旗がはためき、多くの声援が響く中、1000km、173周にわたる長いレースが幕を開けた。 ロッテラー選手がNo.36 PETRONAS TOM’S SC430のスタートドライバーを担当。まずポジションキープの5番手でオープニングラップを終了する。10周目、攻防戦の中からロッテラー選手が4番手に浮上。その後、後続のNo12 GT-Rとの緊迫したバトルを繰り広げ、20周目のシケインでGT-Rからのプッシュに合う。スピンを強いられたNo.36 PETRONAS TOM’S SC430は6番手までポジションダウン。だが、レーシングアクシデントと判断されてしまった。 幸いマシンに大きなダメージはなく、そのまま脇阪へと交代する34周まで走行。脇阪は4番手で後続車とのバトルを続けながら周回を重ねていく。とりわけ、No.100 NSXとのバトルは長く続き、レースでの見所を作り上げた。「アンドレにしても、僕にしてもスティント終盤の10周はキツかった。交代してすぐはタイムもいいのですが、最後はペースが上がらない感じでした」とレース後に脇阪は振り返ったが、次第のペースが上がらなくなるクルマをうまくコントロールすること集中し、69周を終えてピットに戻ってきた。 2度目のスティントになったロッテラー選手。今度はNo.23 GT-Rとのバトルを展開。互いに巧みな駆け引きを見せ、レースを盛り上げた。3度のルーティンワークは105周目。これに先立ち、前方の車両が続々とピットインしていたため、暫定で僅差のトップ争いをしていたNo.36 PETRONAS TOM’S SC430とNo.23 GT-Rが同時にピットイン! スタッフが懸命の作業で脇阪を送り出し、また脇阪も鼻の差ひとつでNo.23 GT-Rの先行を阻止。コースイン直前から激しいガチンコ勝負を見せた。 一気に差をつけるべく、ハイペースで後続を振り切ることに成功した脇阪。順調に周回を重ねていたが、この後、まさかのペナルティボードが提示される。ロッテラー選手がドライブ中、ヘアピンの黄旗区間で追越があったと裁定され、10秒のペナルティストップが言い渡されたのだ。突然の事態にチームも戸惑いを隠せなかったが、速やかにペナルティを消化する判断を下し、111周に脇阪がピットロードをゆっくりと通過。出口近くのペナルティエリアにマシンを10秒止め、再スタートを切った。これにより、No.36 PETRONAS TOM’S SC430はポジションを2つ下げて8番手からの追い上げを開始することとなった。 その後も攻撃の手を緩めることなく、着実なポジションアップに成功。最後のルーティンワークを目前に、脇阪は4番手まで浮上。138周を終えて、ロッテラー選手へと最後の交代を行った。ライトオンが提示され、いよいよ鈴鹿の戦いはナイトランへ。GT300車両などの周回遅れに細心の注意を払いながら、ポジションアップを狙うロッテラー選手は156周のバックストレートでNo.23 GT-Rを逆転。ついに3番手となった。すでに上位2台との差は40秒以上開いており、詰め寄るのは難しい状態ではあったが、最後の最後まで粘りの走行を続け、173周を走破。3位で長く熱いバトルに終止符を打った。 全9戦のうち、今回で6戦が終了したSUPER GT。この戦いまでの獲得最低ポイント2戦分が無効となる決まりから、No.36 PETRONAS TOM’S SC430は、現在ランキング5位。全ポイントが加算される残り3戦に向け、いっそうの健闘に期待がかかる。
■脇阪寿一 コメント
「今回は、ライバルたちとの攻防戦になることが予測されたため、4ストップ5スティントで戦うことが必要だと考えていました。レースで選択したタイヤでは、それぞれのスティント後半にはタイムが落ちることも想定していたので、レースそのものは決してラクな展開ではありませんでした。ペースのことや、途中のペナルティなどがあって、残念な部分もあるので、悔しい気持ちもありますね。でもそれ以外は完ぺきなレースになりました。オーバーテイクもたくさんできたし、終盤に22号車を抑えることもできたので、お客さんにはいいレースをお見せすることができて良かったと思います。チームはいつも全力でレースをしていますし、精一杯走っているので、それが伝わったのではないでしょうか。今回もいい仕事をしてくれたスタッフやチームにはとても感謝しています。皆様には、今後とも厚いご支援を賜りますと共に、ご応援くださいますよう、よろしくお願いいたします」