2008/7/26-27
シリーズ全9戦で行われるSUPER GT。今回第5戦はちょうど折返しの一戦となる。仙台郊外にある山間のサーキット、スポーツランドSUGOは、S-GTが開催されるサーキットの中ではショートコースであり、また高低差のあるテクニカルコースとして知られる。それゆえ、毎年レース中のハプニングが多く、荒れた展開になりやすい。さらに戦いを左右する天候が不安定なことも多く、今年のレースウィーク中も、雨や霧に悩まされることとなった。 金曜日の練習走行は午前と午後の2度実施。ウェットコンディションということもあり、雨量や路面状況に合わせたタイヤチェックを行いながら、セッティングを進めることとなった。土曜日は朝まで雨が残ったが、予選1回目が始まる前に雨も止み、路面も走行ラインの一部が乾き始める中、コースインすることができた。結果、No.36 PETRONAS TOM’S SC430は6番手のタイムで予選1回目を終了。スーパーラップに挑み、そこでポジションをもうひとつ上げることに成功。5位から決勝を迎えることとなった。決勝は霧雨が多少残るも、スリックタイヤでの勝負となる。快調な走りを見せていたアンドレ・ロッテラー選手だったが、走行中、マシンにダメージを負ってしまいペースアップが難しくなってしまった。ルーティンワークのピット作業での修復は困難であるため、その状態のまま脇阪がコースイン。戦闘力に欠けるマシンはドライブするにも困難な状態であったが、懸命のマシンコントロールでチェッカーまで導くことに成功。悔しさは残るものの、10位フィニッシュにより、1ポイント獲得に成功している。
■7月25日・金曜日 公式練習 みちのく仙台での一戦は、東北らしくないほどの暑い週末になるか、それとは逆に涼しくなるか、極端な天候になることが多い。今年は金曜から雨が降り、週末を通し、気温の上がらず曇天模様が続いた。 専有走行1回目は、午前9時45分から11時15分まで。ウェットスタートとなったコース上では、開始早々からバランスを失ってコースアウトする車両も出て、落ち着かない状態。赤旗中断をはさみながら、No.36 PETRONAS TOM’S SC430はまずは9番手につけた。 雨は正午すぎに一度は止み、路面もライン上が次第に乾き始めていたのだが、午後2時20分から16時5分までの専有走行2回目を前に、再び雨が落ちてきた。小降りからしとしとと降る雨へと代わってからは、持ち込んだレインタイヤのチェックとマシンのセッティングなどを実施。タイムは、小康状態のときにマークした1分27秒163がベストとなり、総合11番手となった。
■7月26日・土曜日 予選 午前11時、まずいつもどおりGT300クラスの占有走行が始まり、その20分後、GT500の占有走行が始まった。夜半の雨がまだコースに一部残っていることから、レインタイヤ装着を許可する「ウェット宣言」が出されていたが、コースはほぼドライコンディションに近く、スリックタイヤでの出走となる。 気温は23℃、路面温度は27℃と予想よりも低い中、アタックを担当するロッテラー選手がコースイン。雨上がりのコースは路面コンディションが安定せず、アタックも容易ではない。その中でロッテラー選手は1分17秒542をマークし、4番手につける。さらにもう1周アタックし、タイムアップに成功。結果、1分17秒258のタイムで6番手となり、スーパーラップ進出を決めた。 GT300クラスとの混走枠では脇阪が出走。いつものように予選基準タイムクリアを済ませ、決勝用のセッティングを確認。ガソリンを満タンにしたクルマのバランスチェックをはじめ、次々とメニューをこなした。 「昨日までは雨のレースがいいと思っていましたが、今日のクルマの仕上がりを考えたら、晴れでもいいレースができるのではないかという感触です。事前のタイヤテストで手応えのあったものを実戦投入するか少し悩みましたが、現時点では投入して正解だったと思います。アンドレは、少し迷いがあったようですが、スーパーラップでいいアタックができるよう、ミーティングすれば大丈夫でしょう。菅生の一戦は、勝負権のない厳しい戦いだと予想していましたが、レースできる状態なので、楽しみになってきました」 迎えたスーパーラップ。気温24℃、路面温度29℃の中、5番目に登場したロッテラー選手。ライバル同様、タイヤの温めに時間を要したようだが、その中で集中力の高いアタックを見せ、暫定トップタイムとなる1分18秒109をマークしてみせた。その後、5台がアタックを行い、結果、No.36 PETRONAS TOM’S SC430は、予選5位獲得に成功。脇阪も「明日を考えたら、面白いレースができる」と期待を寄せた。
■7月27日・日曜日 決勝 午前9時から30分間行われたフリー走行。非常に弱い霧雨に見舞われ、ウェット宣言とライトオンの指示が出された。このコンディションの中で、ロッテラー選手と脇阪はほぼ同じペースを刻んで走行終了。No.36 PETRONAS TOM’S SC430は11番手につけた。天気予報によると、午後からの天気は回復に向かうとのこと。当然のことながら、ドライコンディションの準備もしながら、メニューを消化している。 フリー走行を終えた脇阪は、GTAの定例記者会見に出向。TGDA(トヨタGTドライバーズアソシエーション)会長として「岩手・宮城県内陸地震」における、お見舞金を、P・ダンブレック選手とともに株式会社菅生の世古社長に手渡した。脇阪は、「被災者の方に勇気を与えれる走りをしたいと思っています。でも、それ以外にも何かできないかと、TGDAのみんなと話し合い、少しでも役立てばとお見舞い金を持ち寄ることになりました」と経緯を説明した。 サーキットでは、雨が完全に止み、切れることのなかった分厚い雲から青空が顔を出すようになった。これにあわせるかのように次第に湿度が高くなり、少しばかり夏らしい天気が戻ってきたように思われたが、サポートレース直前から再び灰色の空が広がり、合わせて霧が出始めた。一時はメインストレートから1コーナーまで視界不良という危険な状況で、スタート時間が気がかりとなったが、幸いにも予定どおり、午後2時に81周の戦いが幕を開けた。 No.36 PETRONAS TOM’S SC430はロッテラー選手がスタートドライバーを担当。上位7台までポジションキープでオープニングラップを終えるが、いつになく早いタイミングから攻防戦を繰り広げる展開となった。その中で、ハンディウェイトの50kgを感じさせない力強い走りで周回を重ねることに成功したロッテラー選手は、きっちりポジションキープ。逆転の様子を伺った。 ところが14周目、ロッテラー選手がひとつポジションダウン。その少し前からペースが上がらず、本来の走りが見られない。前後車両との攻防戦が続く中、何とか再度5位の座を奪取し、周回を重ねていった。 後に判明したことだが、ロッテラー選手はドライビング中にシケインのポールにフロントスポイラーを接触。結果、左フロントスポイラーの3分の1が破損するダメージを負うことに。空力マシンであるS-GT車両ゆえ、戦闘力が落ちるのは当然のこと。フロントのダウンフォースを失ったマシンはスピードも落ちてしまう。このような厳しいコンディションのマシンを操れば、当然タイヤへの負荷も大きくなる。ロッテラー選手はこのような状況でマシンをコントロール。レースのほぼ半分、40周を走り終え、ピットに戻ってきた。 ドライバー交代のため、ピットで待機していた脇阪によると、左フロントタイヤの磨耗はかなり激しい状態で、バースト寸前だったという。給油、タイヤ交換が済んだクルマでコースインした脇阪は、すでにバランスを失っているマシンをなだめるようにコントロール。ドライブを続けた。 「左フロントのダウンフォースを失っている状態なので、クルマのバランスが崩れてしまい、コーナリングでのコントロールが大変でした。とくに右コーナーではクルマがまったく曲がらなかったのですが、ここ菅生は、最終コーナーが右回りのハイスピードコーナーになっています。レースを戦うにあたり一番大切なコーナーで、結果的にクルマが曲がらず、どうしようもない状態になってしまいました」とレース後の脇阪。勝負どころでパフォーマンスを発揮できない悔しさを内に秘めながら、チェッカーを受けるための周回を重ねることとなった。 とりわけ、フロントタイヤへの負荷を考慮し、クルマにやさしい走りに徹するが、その一方では後続車との攻防戦もヒートアップ。戦闘力を失ったクルマながら、巧みにマシンをコントロールさせ、長きに渡り後続車に応戦した。 結果、81周まで無事クルマをチェッカーまで運んだ脇阪。No.36 PETRONAS TOM’S SC430は10位でフィニッシュ。上位入賞の可能性が大きかっただけに、厳しい結果に終わったが、過酷なコンディションを乗り越えて10位入賞を果たしたことは、シリーズ後半戦の戦いを進める中で、必ずやその成果が活きてくると信じたい。
■脇阪寿一 コメント 「当初、シーズン後半戦を考えると、ここでは控えめなレースをすることになるだろうと思っていたのですが、金曜日の練習走行を終えて、クルマの仕上がりがよく、また、新たに投入したタイヤも手応えがあったことから、レースをしてポイントを多く獲得する戦略になりました。予選でもアンドレが頑張って予選5位を獲得し、チームの士気も上がりました。いつもどおり全開で勝負をしようと挑みましたが、思わぬところで戦闘力を失うことになり、我慢のレースになりました。結果的には10位入賞を果たすことができ、ポイントも1点加算できましたが、やはり悔しい気持ちが先行しています。次は、鈴鹿1000kmの長丁場ですが、この悔しさをぶつけていいレースをしたいと思います。皆様には、今後とも厚いご支援を賜りますと共に、ご応援くださいますよう、よろしくお願いいたします」