2007/3/16
SUPER GT第3戦の舞台はトヨタのホームコース、富士スピードウェイ。シリーズ前半戦のヤマ場となるこの戦いは、通常よりもおよそ200km長い500kmレースとして行われ、過酷な戦いとしても知られる。 そんな中、SUPER GTでは第2戦に引き続きレギュレーションの見直しが行われ、車輌最低重量が「特別性能調整」によって再び変更となった。SC430は車輌重量が1100kgとなり、そこに各チームの戦歴別ハンディウェイトが加算される。よって、No.36 PETRONAS TOM’S SC430は30kg増の1130kgでレースを戦うことになった。これは、相変らずSC勢で一番のへヴィウェイトだ。しかしながら、脇阪寿一、A・ロッテラー両ドライバーは、チームが綿密に用意したメニューに沿った戦いを展開することに成功。予選では5番を獲得、決勝になるとライバルたちとの攻防戦を制して2位でチェッカー。57,000人近い観客を興奮の渦へと巻き込んだ。この結果により、No.36 PETRONAS TOM’S SC430はドライバーポイントで、トップとの差を一層縮めることに成功している。
■5月2日・金曜日 公式練習 曇天模様で始まった第3戦の富士。公式練習が行われる金曜日は午後から雨となり、十分な走りこみをするには至らなかった。中でも前回と今回とでは、特別性能調整のウェイトで40kgの差が出ていたが、これに対し脇阪は「富士に向けて、加重を想定したクルマ作りをしていたので、40kg軽くなったぶん、逆に加重が乗り切らず、タイヤのグリップが薄くなってしまいました」とそのフィーリングを語る。しかし、不安定な天候の中で、ドライとウェットの両コンディションでマシンのフィーリングをチェックできたことの意味は大きい、と満足した様子でもあった。
■5月3日・土曜日 予選 前夜に上がると思われた雨が予選日の土曜まで残り、朝10時20分からの予選1回目はいつになく慌しいスケジュールのもとで進んでいった。通常、開始10分はたいていピットでコースインのタイミングを待つのだが、今回は開始早々からほぼ全車がコースイン。少しでも雨量の少ないうちにアタックを済ませようと、トラフィックを巻き起こした。 気温18℃、路面温度21℃というコンディションの中、GT500の予選1回目がスタート。No.36 PETRONAS TOM’S SC430にはアンドレ・ロッテラー選手が乗り込んだ。実は、昨日から完全なドライコンディションが確保できていれば脇阪がアタックを担当する予定だったが、不安定な天候を好むロッテラー選手に尽力してもらうことになり、予定が変更された。 レインタイヤの中からミディアムソフトを選択したロッテラー選手。いつ状況が好転してタイムアップできるか、或いは逆に雨が強ってアタックが難しくなるか、そのタイミングの見極めが難しい中で、ロッテラー選手は1分42秒175をマークし、暫定2番手につけた。この直後、脇阪にスイッチする際、ドライコンディション用のスリックタイヤを装着する作戦もあったが、ここはまず制限時間を優先。ユーズドタイヤのまま脇阪がアタックへと向かった。 「Aコーナー以降は路面が乾き始めていたので、スリックタイヤでアタックしていたらタイムアップも可能だったかなという気持ちもありますが、そのあとまた雨が落ちてきたことを考えれば、まずまずの予選だったと思います」と脇阪。アタック終盤でポジションアップした車輌が多かったため、No.36 PETRONAS TOM’S SC430は暫定7番手から午後のスーパーラップに賭けることとなった。 迎えたスーパーラップは、すでに完璧な路面コンディションが確保される中でのアタック。ロッテラー選手は1分35秒017のタイムをマーク、ポジションを2つ上げて予選5位獲得に成功した。
■5月4日・日曜日 決勝 サーキットにようやく青空が広がった決勝日。午前9時から30分間行われたフリー走行では、気温22℃、路面温度は27℃から29℃へと上昇。さわやかな初夏を思わせる天候に恵まれた。No.36 PETRONAS TOM’S SC430にはまずロッテラー選手が乗り込み、マシンをチェック。半分を過ぎたころ、脇阪へスイッチした。金曜の練習走行時からの課題であるグリップの薄さは依然残っており、加えてオーバーステアが気になる状態だったが、その中で脇阪はドライコンディションでの決勝セットを再確認しながら次第にペースアップ。最終周に自己ベストタイムをマークした。 澄み渡る青空が次第に遠のき、午後に入るとにわかに曇り始め、天候の行方が怪しくなってくる。午後2時からの決勝を前に1コーナー先には泣きそうな空が広がり、湿った空気が吹き抜けた。だが、幸い雨にはならず、無事に最後までドライコンディションでの戦いが成立した。 110周の戦いが始まり、スタートドライバーのロッテラー選手は早くもオープニングラップで1台をパス、4位に浮上する。2位から4位までがSC430で形成される中、レースは早くも序盤からGT300車両の周回遅れを巻き込み、大混乱に。その中で、ロッテラー選手は惜しくも後続のNSXにかわされ、5番手に戻ったが、つねに逆転できる位置に付け周回を重ねた。 500kmの戦いとなる今回は、ルーティンワークとしてのピットインを2回行う。No.36 PETRONAS TOM’S SC430は、まずロッテラー選手が連続2スティントを担当。2回目のピットインで脇阪へとスイッチする計画を立てた。ライバルたちが30周を前に最初のルーティンワークを始める中、38周終了時にピットイン。給油、タイヤ交換を行い、スピーディにコースへと送り出した。 ポジションキープでレースを続けるロッテラー選手。ポジション争いする集団の中で、先に動いたのはNSX勢。2回目のルーティンワークが始まり、いよいよ終盤に向けて戦いがヒートアップする。No.36 PETRONAS TOM’S SC430のピットインは72周終了時。ドライバー交代、給油がスムーズ行われ、そして足下にはソフトコンパウンドの真新しいタイヤが装着された。全作業に要した時間はわずか34秒。タイヤを2本しか交換しないNSX勢を上回るスタッフの作業が実を結び、大半が最後のルーティンワークを終えると、No.36 PETRONAS TOM’S SC430は2番手へ浮上。秀でたチームワークを証明した。 コースへ向った脇阪。通常、レースウィーク中に皮むきを済ませたタイヤを装着するが、今回はまったくのニュータイヤ。アウトラップではじっくりとタイヤに熱を入れ、戦闘モードを高めていく。脇阪を先頭に、2位以下は1秒を切る僅差での戦いを展開したため、その攻防戦はレース後半の見どころになった。緊迫するポジション争いを楽しみながら周回を重ねる脇阪。後方からは勢いに乗るNSXが迫り来る。まるで相手の手の内を知っているかのように巧みなドライビングを見せる脇阪とNo.100 NSXとのバトルは長く続いたが、98周のAコーナーで粘った末にNo.100 NSXが先行。だがその後方から脇阪はなおもプッシュし続けた。するとあろうことかラスト4周でNo.100 NSXが単独コースアウト。最後まで攻めの姿勢を貫いたNo.36 PETRONAS TOM’S SC430が再び2位へ浮上。これによって同じSC430のNo.38号車を先頭に、SC430が1−2フィニッシュを達成。今季最高位、また2度目となる表彰台をホームサーキットで実現するという好成績を残した。 このレースで15点を獲得したNo.36 PETRONAS TOM’S SC430。ドライバーポイントでは3位となったが、2位とはわずか1点差。さらにトップとの差は縮まり、中盤戦に向けて弾みをつける結果となった。
■脇阪寿一 コメント 「今回は、特別性能調整の見直しによって、車重が40kg軽くなりましたが、その一方で、クルマ的には加重がうまく乗り切らず、タイヤグリップが薄くなるような状態になりました。しかしながら、エンジニアをはじめ、チームが一丸となってクルマを仕上げてくれ、また決勝で初めて装着することになったタイヤに関しては、エンジニアおよびブリヂストンのスタッフが的確なアドバイスを与えてくださったので、安心して自信を持って攻めの走りをすることができました。トヨタの1−2フィニッシュを実現させるというプレッシャーの中で、どうしても2位を守りたいという気持ちがありました。その中でも後続車とのバトルは面白く、周回遅れのGT300車輌をうまく利用して、差をつけるような走りを続けました。こちらとしてはうまく逃げ切れると思いましたが、相手のペースもよく、結果、先行されました。ただ、後方からプレッシャーをかけることでチャンスがあると思ったので、つねにプッシュし続けました。いいバトルができて、しかも2位の結果が残せて良かったです。アンドレも難しい序盤のコンディションですばらしい走りをして頑張ってくれました。これからもいいパフォーマンスをお見せしたいと思いますので、今後ともご支援を賜りますと共に、また応援くださいますよう、よろしくお願いいたします」