SUPER GT第3戦は、ゴールデンウィーク中の静岡・富士スピードウェイが舞台。言わずもがなトヨタのホームサーキットである。300km前後の戦いが主流のSUPER
GTだが、今回は500kmの長丁場ということもあり、予選でのスピードはもちろんのこと、決勝を見据えたクルマ作りに時間を割くこととなった。レースウィーク初日は午後から雨模様だったが、予選日、決勝日ともに好天となり、絶好のレース日和に恵まれた。予選では一発の速さを活かしたアプローチで2位を獲得。今シーズン最高位から決勝レースを迎えることに成功した。しかしながら、決勝ではフォーメーションラップ中にマシントラブルが発生。ピットへとマシンを戻せず、コース上にストップしたため、万事休す。戦わずしてレースを終えることとなった。
■5月2日・水曜日 公式練習
第3戦の富士はゴールデンウィークの間に行われるため、通常のレースウィークとは異なるスケジュールで開催されている。今回は、水曜日が練習日となり、祝日の3、4日が予選と決勝日にあてがわれた。
富士での戦いを前に、チームではフロントのサスペンションを変更。練習走行ではそのフィーリングを確認した。脇阪は「タイムも出ているので、いいレベルにはあると思います。今、リアのグリップのマッチングを確認しているところで、フロントのグリップレベルはいいのですが、リアのほうがもう少しという感じです。これから作業で調整していくことになると思います」とその手応えを語った。午前中はブレーキパッドの焼入れ、午後からは決勝をシミュレートしたロングの走行などを消化。総合結果で2番手となるタイムをマークした。「今回、勝つ権利は十分にあると思います。ライバルたちと比べても、一発のタイムだけでなく決勝での安定したタイムを刻めるのが強みだと思うので、ミスなくいい流れにもっていければ、可能性はあるでしょう」と脇阪。序盤戦の締めくくりとなる富士で、好成績を残したいという強い気持ちを言葉にした。
■5月3日・木曜日・祝日 予選
快晴の天気に恵まれた予選日。GT300クラスの予選後、午前10時40分からスタートしたGT500のクラスのアタック時には、気温20度、路面温度32度のコンディションとなった。早めのコースインでアタックを始める他車を横目に、No.1
宝山 TOMユS SC430はピットで待機。10時55分頃、アンドレ・ロッテラー選手が満を持してコースへ向かった。
アタックラップ中、他車が最終コーナーでスピンするというハプニングもあったが、1分34秒343の好タイムをマークし、2番手に浮上。しかしながら、終了間際にタイムアップした車輌が現れ、3番手で予選を終えた。その後、GT300クラスとの混走では脇阪がまず予選通過基準タイムをクリア。さらに決勝用のセッティング確認はもちろん、決勝時のシミュレートを兼ねてライバル車を意識しての走行を行うなど、精力的に周回を重ねた。
午後からの予選2回目。気温、路面温度もほぼ変わらないなか、ロッテラー選手がコースイン。スーパーラップでのアタックを見据えたセッティング確認を行った。そして迎えた午後4時23分からのスーパーラップ。気温19度、路面温度は26度まで下がる中、10台中8番目にロッテラー選手がアタックを開始した。ロッテラー選手は最終セクターでタイムを削り取り、1分33秒550のタイムをマーク。暫定トップに立ち、残る2人のアタックを待った。結果、最終アタッカーがロッテラー選手のタイムを逆転。これにより、No.1
宝山 TOMユS SC430は、予選2位を獲得。フロントローから決勝スタートを迎えることとなった。
「確かにポールポジションは獲りたかったのですが、今日の仕事はパーフェクトだったと思います。いつも富士ではSCが速いと騒がれますが、今季はライバルたちも負けていませんから。そのハードな戦いの中で、2番手のポジションが獲れて良かったと思います」と予選日を振り返った脇阪。勝利を狙ううえで絶好のポジションを獲得できたことに対し、自然に笑みがこぼれた。
■5月4日・金曜日・祝日 決勝
決勝を迎えた富士スピードウェイ。レースウィーク一番の快晴に恵まれ、朝からまだ雪化粧の残る富士山がきれいに顔を出した。午前9時、30分にわたるフリー走行がスタート。No.1
宝山 TOMユS SC430では、レース同様、まずはロッテラー選手がマシンに乗り込みコースイン。前日のアタックを経て、さらに一歩前進したマシンに仕上げるべく、最後の最後まで確認に時間をかけた。ちょうど半分を消化し、ロッテラー選手から脇阪へとスイッチ。決勝を想定したピット作業のシミュレーションを行い、コースイン。しばし周回を重ね、セッション終了まで残り10分の時点でピットインした。このとき、フロントのエアロパーツの一部を調整。再度コースへ向かい、チェッカーまで走行した。
フリー走行を4位で終えた脇阪は、「前日の予選の段階で、フロントのグリップのほうがまだ強い感じでしたので、今朝、調整したものを試しました。クルマを進歩させるために、新しいことを順次試していくという、“ステップ・バイ・ステップ”をやっています。確かに時間はかかりますが、この階段を上ることが次につながっていくので、ここでうまくまとめて結果を出したいと思います」と決勝に向けての抱負を語った。
午後に入り、初夏を思わせるような強い日差しが照りつけた富士スピードウェイ。午後2時からの決勝を前に、すでに気温は27度、路面温度は39度まで上昇することとなった。今回の戦いは500kmの長丁場。しかしながら、脇阪の言葉を借りれば「いつもより距離が長いスプリントレース」でしかない。現状のポテンシャルをフルに引き出して全力で戦うことが、勝利への最短ルートである戦いが始まろうとしていた。
午後2時、GT500、GT300、総勢44台のマシンがダミーグリッドを後にし、フォーメーションラップが始まった。No.1
宝山 TOMユS SC430のマシンにはスタートドライバーを務めるロッテラー選手が乗り込んでいる。隊列を組みながら、爆音に包まれたマシンがゆっくりコースを周回。1コーナー、100R、ヘアピン…と進み、ダンロップコーナーへとマシンが進入したそのとき、ハプニングがNo.1
宝山 TOMユS SC430に襲い掛かった。なんとマシンが突然コース上でストップしてしまったのだ。駆動系トラブルにより、なす術を失ったマシンはオフィシャルによってコースサイドにけん引され、ピットにすら戻ることを許されなかった。これにより、No.1
宝山 TOMユS SC430は戦わずして富士のレースを終えることとなり、脇阪はもちろんのこと、チームにとって悔しさが残る1戦となった。
■脇阪寿一 コメント
今回は、練習走行の時点からさまざまなアプローチをすることにより、予選での一発の速さだけでなく、決勝でいいペースで走れるようなクルマに仕上がり、万全の状態でレースの瞬間を迎えていました。思いもよらないトラブルさえなければ、レース結果から見ても今回は勝負ができる状態だったし、優勝もできたと信じています。しかしながら、戦わずしてレースを終えたことは僕たちに突きつけられた現実であり、これもレースであるということを認めなければなりません。連休のさなか、わざわざ富士まで応援に来てくださったスポンサーの方々やファンのみなさんの目の前で戦う姿をお見せできなかったことがとても残念ですし、また申し訳ない気持ちでいっぱいです。この悔しさを糧に、そして新たな気持ちで次戦のマレーシア・セパンでの戦いに挑みたいと思います。灼熱の暑さを跳ね返すように頑張りますので、今後ともなにとぞご声援、ご支援くださいますよう、よろしくお願いいたします。